近代科学の方法論(要素還元主義)は、対象領域の専門化や細分化により、
詳細で高度な研究・開発を推し進め、その成果として多種多様のテクノロジーを生み出した。
科学技術の進歩による、生産性の向上、利便性の拡大など、物質環境の変化にはめざましいものがある。
近代化により、いわゆる文化的生活が享受できるようになったことは、それなりに価値あることだと思うが、
そのことが品揃え豊富で、便利になった外部環境に、何でも”委ねてしまう”考え方を横行させ、
人間本来もっている自立的な判断能力や感性を鈍化させてしまっている。
自己の健康管理に関してもしかりである。モノ(薬剤、治療器具、健康関連商品)の氾濫、
設備(医療関連施設、健康関連施設)の増加、情報(健康雑誌、TV、インターネットなどの
メディアを使った健康情報)の過多と混乱は、本人の内部にある根源的生理の自覚を薄れさせ、
まるで健康の全てが外部にあるかのような錯覚を生み出している。